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2021

プロトタイプをたくさん作る以上に、試すことの方が重要

1.プロトタイプに対するテスト回数の多いチームのほうが順位は上になっている

前回のメルマガでは弊社が実施するMONO-COTO INNOVATIONにおいて学年差があるチームのほうが創造性の高いアウトプットを出している、という話をしました。(詳細はこちら) その背景にはリーダーシップ/フォロワーシップの関係性やフラットな議論の場によって議論の量や質を高める効果があることを述べました。

今回は前回触れられなかったプロトタイプとテストの回数の関係性について触れていきます。

デザイン思考ではプロトタイプ&テストのプロセスが重要であり、考えてもわからないことはまずは試してみて…という感覚が必要となります。そのため当初私は

「たくさんのプロトタイプやテストを行ったチームほど順位が上になる(≒創造性の高いアウトプットを生み出せる)」

と思っていましたが、分析を行うと確かに④テストの回数(0.23)は低い正の相関を示していましたが、③制作したプロトタイプの個数(-0.29)は低い負の相関を示していました。

  • 学年差(0.41)
  • 1つのプロトタイプに対するテスト(試行)回数(0.41)
  • 制作したプロトタイプの個数(-0.29)
  • メンタリング回数・Day3におけるメンタリングの実施(0.24)
  • テスト(試行)回数(0.23)
    (カッコ内は相関係数。相関係数は1~-1の値を取り、1に近ければ正の相関、-1に近ければ負の相関があります。また相関係数の絶対値が0.2~0.4以下であれば低い相関があり、0.4~0.7以下であれば相関あり、0.7~1.0であれば高い相関があると言われます。)


あれ、と思い上位チームのテストの回数やプロトタイプの個数を見ていたところ、上位チームはプロトタイプの数は多くないものの、テストの回数が多い特徴があったので、各チームの制作した1つのプロトタイプあたりに対するテスト回数を求め、そのスコアと順位の相関を見ると、②1つのプロトタイプに対するテスト回数(0.41)と正の相関があることが分かりました。


2.Design as Researchという考え方

では、どうしてたくさんプロトタイプを制作するよりも、テスト回数を増やす方が良いのでしょうか。
それはテストを通じて新たな情報を得ており、新たな仮説を考えるきっかけになっているからではないでしょうか。

(ここからはデータ等では分からないところなので、私の意見となります)

デザイン思考でよく勘違いされるのは、テスト=検証、という捉え方をされてしまうことです。確かにそういったシーンもありますが、そもそも新たなモノを考える上で大切なことは、自分たちだけの情報を得ることで、自分たちならではの仮説を生み出すことです。

今回のテーマの1つは「ペットボトルのゴミ問題を解決するモノ」で、ペットボトルゴミについてインターネットで分かることから仮説を考えるのもありですが、もっとミクロな視点でユーザーがどういう気持ちでペットボトルを捨てているのか、どんな行動をしているのか…といったことはネットで探しても情報はありません。

むしろ身近な人に聞いたり、行動観察を通じて情報を得ていくのですがその際に自分たちのラフなアイデアを元に作ったプロトタイプを使ってもらいながら、話を聞いたり行動観察を行うほうがよりリアルな声や姿が見えてきます。 例えば、「キャップやラベルとペットボトル本体を分別しないのは、ゴミ箱がそもそも設置されていないからだ!」と考えた時、とりあえず分別できるゴミ箱を制作し、町中に設置してみます。


すると、多くの人が分別してペットボトルを捨てるかと思いきや…そもそもゴミ箱として認識されず、誰もゴミを捨ててくれません。しかし近くにある自販機のゴミ箱に捨てている人がいるなど、不思議な状況が起こりました。

こういった事象から、「もしかして多くの人は脳内に『町中のゴミ箱マップ』なるものがあるのかもしれない」といったことや、「ゴミを捨てても良いと思える形でないと何かしら不安で捨てられない」といったことが考えられます。

このような仮説はネットの情報や単なるインタビューからは得られません。むしろテストを通じて得られた自分たちならではの情報から考えられる仮説です。

このように、アイデアを考えてプロトタイプを作って、テストを通じてそのテーマに対する理解を深める、情報を集めるというのは「Design as Research(リサーチとしてのデザイン)」という考え方です。

Design as Researchではプロトタイプをたくさん作ればよいという訳ではなく、テストを通じてたくさんの情報を得ることに重きが置かれます(もちろんプロトタイプを作ることで得られる気づきもたくさんありますが、数多く作れば良いという話ではない)。 そのため今回創造性の高いアウトプットを生んだチームは、1つ1つのプロトタイプに対してテストをしっかり行い、そこから自分たちならではの情報を得たのではないでしょうか。

3.寄り道をする大切さ

なにかモノを作るというのは、一直線に完成まで進むイメージがあるかもしれませんが、そんなことは決してなく、むしろ作りながら新たな気づきを得たり、学ぶことがあります。


そのため無意味なモノを作ったり、試すことに対して「効率が悪い」と判断すると、実はそこで得られる自分だけの情報、そこから考えられるユニークな仮説を見つける機会を失うことになります。

探究授業の場合、進捗も直線に進まないことがあると思いますがその際に無理に直線にしようとして、意味のない探究を行うのではなく、むしろ寄り道を推奨するような授業設計にしていく必要があるのかもしれません。 そして寄り道をする際は、何かしらアウトプットをし、テストをしていく=自分ならではの情報を得る、というところさえ押さえておけばその寄り道がきっかけとして、ユニークな仮説につながるかもしれません。